信用リスク(デフォルトリスク)とは

債券や株式の発行体(企業や政府自治体など)が破綻するリスクのことです。こうしたリスクは多くの商品に存在しており、広義には円という通貨も日本国という政府の信用リスクを抱えていることになります。

また、もっと身近なところでいえば、友人・知人に対するお金の貸し借りについても信用リスクは存在する。債務者(お金の借り手)が債権者(貸し手)に対して返済できないリスクのことをさす。

信用リスク(デフォルトリスク)と投資

信用リスクは、債券などの発行体自身のリスクといえます。特に、債務に関してはデフォルトリスク(債務不履行リスク)とも呼ばれます。

信用リスクは債務者の持つリスクが反映されるようなすべての取引に波及する非常に広いリスクであるといえる。

国債(社債)等の債券、株式、預金などは投資家(預金者)は債権者であり、その投資の相手方の信用リスクを負っている。
また、逆に住宅ローンやキャッシング・カードローンなどを借り入れる際、金融機関は私たち利用者の信用リスクを負っている。

下記にいくつかの例を出して考えてみましょう。

銀行預金をするときの信用リスク

例えば、銀行預金の場合、預金している銀行の信用リスクを抱えている。銀行が破たんした場合には、債権者である預金者は債務者である銀行が返済できない場合には損失を被るリスクがある。
しかしながら、銀行預金の場合、預金保険機構により1000万円とその利息までは保護(ペイオフ・預金保険制度)されているため、信用リスクはゼロです。ただし、それを超過した分については各金融機関が破綻した場合、保護されないため信用リスクがあります。

記憶に新しい例では、日本振興銀行が破たんした際、ペイオフが発動され、数%の預金者は一部の預金が返ってきませんでした。

 

債券投資をする際の信用リスク

債券投資の場合は、債券の発行体が破綻(デフォルト)した場合には、元本が保護されないため、信用リスクを持つことになります。株式投資の場合も企業が破綻した場合、株は無価値となりますので、発行体(企業)の信用リスクを抱えています。

国債の場合は、発行している国(政府)の信用リスク。企業が発行する社債の場合はその会社の信用リスクを負います。通常債券の場合、こうした信用リスクの大きさが「金利」に反映されています。
信用リスクの高い債券はその分、金利が高く設定されており、逆に信用リスクの低い債券は金利が安く設定されています。

欧州危機により、スペイン国債の金利が上昇・・・、イタリア国債の金利が上昇・・・などといわれているニュースをご覧になったかと思いますが、これは、スペインやイタリアという国の信用リスクが上昇しているというということを意味しています。

 

信用リスクを評価するしくみ

信用リスクはそのリスクがどれほど大きいものであるのかを「評価」することができる必要があります。そうでなければ、適切なリスク管理をすることができません。

信用格付けによる評価

国や大企業などに対する信用リスクについては「格付(信用格付)」により評価されています。格付が高いほど、信用リスクは低く、格付が低いほど信用リスクが高くなります。
こうした格付は「格付会社」という会社が行っており、代表的な会社は「スタンダード&プアーズ」や「ムーディーズ」などが挙げられます。

こうした格付会社では会社や国、地方自治体などを「A」から「D」のアルファベットで管理しています。詳しい格付の説明については「信用格付について」などの外部サイトで詳しく説明されているのでそうしたサイトでご確認ください。

こうした信用格付けは公開されており、国や企業などの信用リスクを格付けという形で評価することができます。

国債や社債といった債券取引をする場合には、こうした格付けなどを参考にリスクを把握するようにします。

 

その他の信用評価

国や大企業などの信用評価については「信用格付け」が大きな役割を果たします。しかしながら、それ以外のもっと小さな取引の場合は別の手段を用いて信用評価をする必要があります。たとえば、個人間でのお金の融通、小口金融取引などが挙げられます。

こうした場合にはどのようにして信用評価をするのでしょうか?

たとえば、クレジットカードやキャッシング・カードローン、住宅ローンなどの与信取引を行う場合、金融期間は「審査」を行って、その人の信用リスクを調査します。
その結果で、融資の可否や金額を決定するのです。具体的にどのような審査が行われているかについては下記の参考サイトをご覧ください。

クレジットカードの審査
キャッシングの審査
住宅ローンの審査

 

信用リスクがある取引をする際のポイント

ただ、信用リスクがある=取引しないというのでは世の中の金融取引はうまく流れません。信用リスクがある場合は、それをヘッジ(回避)する。または、リスクに見合ったリターンを提供するという形で「リスクを負ったうえでの取引」が行われます。

  1. 信用リスクを引き下げるための担保や保証を付ける
    例えば身元・所属を公開して、しっかりとした証文を書く。また、その1万円の裏づけとなるような資産を担保として入れるなどが挙げられるでしょう。こうした手段をとることで見知らぬ人の信用リスクを引き下げることができます。例えば、その人が1万円を借りる代わり、担保として2万円相当の時計を預けるという場合、換算しても1万円以上の価値はある担保を預かりますので、信用リスクを引き下げることができます。
    また、あなたが信用している友人が、「この人は信用できる人だよ」と助言したり、「もし彼が返済できないときは僕がかわりに返すよ」と約束してくれたら、貸してもいいかなと思うのではないでしょうか?
    これは、担保の差し入れや第三者からの保証などが挙げられます。例えば住宅ローンを組む際に土地建物を担保とするのはこのためですし、銀行における預金保険制度は第三者からの保証という意味になります。


  2. 信用リスクに対するリターンを引き上げる
    第2の方法は信用リスクに見合うリターンを提供することです。
    たとえば、債券投資のところで書いたように、信用リスクが高い企業が発行する債券ほど「金利が高く設定」されます。
    金利というリターンを大きくすることにより、信用リスクを負ってもよいと判断させるわけです。

    これは銀行がお金を貸す場合、貸す人の信用リスクに応じて金利を変えていると同じです。 キャッシングやカードローンなどでは、借り手の信用力に応じて金利に差が付けられていますが、これは信用リスクの低い人には低金利で、逆に高い人には高金利で融資することでバランスをとっているのです。

 

信用リスクを利用したデリバティブ取引

こうした信用リスクは金融取引では様々に形を変えて取引されています。以下では、代表的な信用リスクを利用した金融取引を見てみましょう。

・クレジットデフォルトスワップ(CDS)
債権を保証をすることで代わりに対価を得る取引です。ある会社がデフォルト(債務不履行)を起こした場合には、引き受けてがそのリスクを負うという取引で、もしデフォルトが無い場合には、対価を受け取れます。信用リスクを移転する取引として利用されます。
CDSの買い手は、信用リスクをゼロにすることができますが、その分「プレミアム」というオプション料を支払う必要が理ます。一方のCDSの売り手は何も起こらなければ収入となりますが、万が一、デフォルトが発生した場合にはその損害を補償する必要があります。
クレジットデフォルトスワップとは

・クレジットリンク債
仕組み債と呼ばれる債券の一種で、ある債券にまた別の発行体の信用リスクをリンクさせたもので、上記のクレジットデフォルトスワップを債券に上乗せしたもの。信用リスク分クーポン(利子)は高くなりますが、仮にデフォルトを引き起こした場合には元本が毀損するケースがあります。
クレジットリンク債とは

「信用リスク(デフォルトリスク)とは」の用語解説

ここではこのページで使われた様々な用語について解説をします。リンク先は「金融経済用語辞典」の用語解説ページ、または関連情報が掲載されているサイトです。

信用リスク(デフォルトリスク)とは
通貨や債務を抱える発行体が持つリスクのこと。破綻リスクやデフォルトリスクとも呼ばれる。リスクが高いほど要求リターンは大きくなる。

ペイオフ 預金保険制度
ペイオフとは預金者を保護する制度でその中でも預金保険制度は預金者を実際に金融機関(銀行)が破綻した場合に金銭面で保護する制度のこと

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